運動はあらゆる病気の予防に効果的であることが知られていますが、なかなか自分の意志だけでは継続が難しいことも事実です。そうした中、人々はさまざまな工夫をして自分のモチベーションを高めたり、継続しやすい環境づくりなどをしていますが、今回は運動による「効果の見える化」がどの程度、運動の意欲に影響を与え得るのかについて研究した内容をご紹介します。
広義の運動の中には、病気や怪我をした後に行うリハビリテーションが含まれますが、リハビリと効果の見える化の関係について分析した研究になります。
まず背景として、脳血管疾患や骨折等の運動器疾患などの患者の方には、術後の早期リハビリテーションの重要性が指摘されています。手術後に筋運動を行わない場合には初期に約1~3%/日、10~15%/週の割合で筋力低下がおこり、3~5週間で約50%に低下する1)との報告もあり、早期のリハビリテーションを行うことで、退院時の筋力の改善等により回復を期待しやすいといわれてます。
そこで、国立病院機構大阪南医療センターと滋慶医療科学大学院大学との2019年の共同研究では、ウェアラブル端末「モフバンド」を用いた簡易なモーションキャプチャサービス「モフ測」を利用し、リハビリテーションの成果を手軽にデータ化し 関連情報と合わせて患者へフィードバックすることで、そうでない場合と比べて患者のリハビリ実施意欲等にどのような影響があるかの比較を試みました。対象は2018 年に大阪南医療センターへ入院した大腿骨骨折患者として、フィードバックを行った群、行わなかった群に分けて分析を行いました。
その結果、入院中の平均7 日の観測期間中のリハビリ実施回数がフィードバックを行った群の方が行わなかった群に比べて平均156分(7.8 単位)多くなるという結果が得られました。すなわち、フィードバックを行った群の患者さんは行わなかった群の患者さんと比べて1日平均22分多く(約5割増)のリハビリを実施できたということになります。この差が退院時の筋力やその後の改善にも相応の影響があったものと考えられます。
このテーマについては、他にも多くの研究がなされていますが、その中でも興味深いものを1つご紹介しますと、関西医療大学の研究チームが2016年に発表した「成人の運動習慣を継続するための支援に関する実証的研究」によると、運動の継続意欲に効果があると認められた要素は【仲間がいること】、【自分なりの目標を持つこと】、【自らを意識づけること】、【参加する場や指導者がいること】、そして【成果が見えること】が含まれるとのことです。
やはり「成果(効果)の見える化」は重要とのことです。
ぜひ、ご自身の運動習慣の中に「効果の見える化」という要素を取り入れて頂き、健康的な生活づくりの参考にして頂ければと思います。
なお、上記で説明したモフ測の詳細につきましては(株)Moffの公式HPへ(https://jp.moff.mobi/)
【出典】
1) 東京都福祉保健局「日常生活動作(ADL)を向上させるための患者指導マニュアル」
2) 日本集中治療医学会早期リハビリテーション検討委員会「集中治療における早期リハビリテーション~根拠に基づくエキスパートコンセンサス~」日集中医誌 2017;24:255-303
3) 三好正道「大腿骨近位部骨折のリハビリテーションからみえる廃用症候群」Jpn J Rehabil Med 2016 ; 53 : 17-26
4) 東京都福祉保健局「日常生活動作(ADL)を向上させるための患者指導マニュアル」
5) 東京都福祉保健局「日常生活動作(ADL)を向上させるための患者指導マニュアル」
記事提供:株式会社Moff