子供の頃、夏休みの宿題をいつ頃やっていましたか?7月中に終わらせて、8月はゲームにキャンプ、プールの遊び三昧・・・といった計画を立てたものの、実際には8月の終わりに必死になって終わらせた人もいるかもしれません。
このように宿題を後回しにしていたあなた!仕事も先延ばしをしてしまい、つい残業をしてしまっていませんか?
私の研究室では、ある企業から残業時間に関するデータの提供を受けました。また、この企業の中で、子供の頃の夏休みの宿題をいつ終わらせたかといったことを聞くアンケート調査を行わせてもらいました。両者の関係を分析すると、夏休みの宿題を後回しにしていた人ほど深夜残業が長いという関係が明らかになりました。
人間は将来よりも今に価値を置いて判断する傾向にあります。遊びのような楽しいことは後にするよりも今すぐやりたいですが、やりたくない仕事のような楽しくないことは今はせずに後にしようとしがちです。楽しくないことはつい先延ばししてしまいます。
長時間労働はメンタルヘルスに悪影響を与えることが知られています。先延ばしによる残業を防げば、長時間労働を減らすことができるかもしれません。
では、どうすれば先延ばしを防ぐことができるでしょうか?
行動経済学による処方箋は「コミットメント」を活用することです。コミットメントとは、将来の自分に対して約束をし、将来の自分の行動を縛るようなものです。目標達成できたら自分にご褒美をあげるといった目標設定はコミットメントの一例です。また、締め切りを一度だけに設定するのではなく、小刻みに締切を設定することも効果的だと知られています。
目標や締め切りを設定しても忘れてしまうこともあるかもしれません。リマインダーを活用して、これらを思い出される工夫も有効です。
私の研究室では、行動経済学の知見を健康や労働に活かす研究を実施しています。行動経済学、ナッジの活用にご関心のある方は、ご相談ください。
出典:黒川博文・佐々木周作・大竹文雄(2017)「長時間労働者の特性と働き方改革の効果」『行動経済学』Vol.10, p.50-66.
記事提供:兵庫県立大学国際商経学部黒川研究室