「食はいのちなり」と言いますが、私たちの身体は、日々食べたもので作られています。食を通じて心身ともに健康維持の知識を持つことは大切です。
高齢になると、食事を摂る量が少なくなり、食材も偏りがちになる事が多いようです。また、暮らしの環境により、買い物や調理が難しいといった理由でパンや麺類に偏って食べている人が少なくありません。肉や魚の摂取量が少なくなり、タンパク質が不足すると筋肉量が減少し、筋力や握力など身体機能が低下する状態を「サルコペニア」と言います。身体機能障害や転倒のリスク因子になります。その状態が進むと、心身の気力や活力が低下して身体の予備能力が低下し、健康障害を起こしやすい状態、いわゆる虚弱となり、「フレイル」へと進みます。フレイルは身体機能より精神機能や社会性の低下など介護が必要となる状態に近くなります。
しかし、適切に栄養を摂り、運動など心身ともに生活サポートを受けると回復する可能性がある状態です。
高齢の方にとって「挑戦」にはエネルギーが必要となります。外出が億劫な人でも、昔よく行った店に出かけようと誘われると「食べたい」と言う気持ちが呼び起こされることがあります。記念日や手作りのおふくろの味、嬉しい時、行事の時の食事は思い出に残ります。食事は人が生きてきた歴史といえると思います。その人の生活の中で様々な思い出と結びついた食事を食べてもらうのも良いと思います。
とくに物忘れや認知症状がでてくると、日々の生活でいろいろな不安を感じてきます。その人たちの生活のリズムやこころの尊厳を支えるのは、毎日の食事が大きく影響するようです。
バランスの良い食事をするために「4群点数法」と言う簡単な計算法がありお勧めしています。
食品を栄養的な特徴によって4グループに分け、80Calを1点とし、「卵= 1点」と言うように各品目を点数で表しています。高齢になると特に2群(肉・魚・豆腐など豆製品)をしっかり取るように心がけましょう。
また、食品では、補えない栄養素はサプリメントを活用するのも良いでしょう。例えば、水溶性ビタミンB群の「葉酸」は食事から摂取するのが難しく不足すると、動脈硬化が進み、またアルツハイマー認知症や胎児の障害につながることが解明されてきました。
(400μg/day)日本ではなされていませんが現在世界各国(86カ国以上)では主食に使われる小麦粉に葉酸添加が広まっています。
また、食欲がなくても、朝食を食べることは老若男女に関わらず大事な習慣です。
「早寝早起き朝ごはん」運動は国民運動として推進されています。
食事とともに運動も大切です。エレベーターはなるべく使わず、バス停の1区間を歩くなどそんなことから始めると良いでしょう。まとまった運動が難しければ、〇〇の前を通った時はつま先立ちをする…などの自分ルールを決めて、日々少しずつ取り組んでみてください。塵も積もれば山となると言われますが、歳を重ねても筋力を維持しようと心がけることが大切です。
思いついた時から始めましょう!
株式会社 ドクターミール 代表取締役
公益社団法人 栄養医学協会 常務理事
小野裕美 博士(栄養学)・ MBA
http://www.dr-meal.com/