女性の心臓病 更年期に伴う微小血管狭心症
【女性の心臓病は男性とちがう?】
女性の心臓病の症状は男性と異なることが知られ、そのために正しく診断されず悩んでい る方をよく見かけます。これらは閉経に伴うホルモンバランスの乱れとそれに伴う多彩な 症状などが影響しています。
【微小血管狭心症とは】
一般に狭心症は心筋に血液を供給している冠動脈が狭くなり十分な血液が送れなくなった時に生じます。これには2種類の発症の仕方があり、血管内にプラークといわれる脂分が蓄積して狭くなる労作性狭心症と血管はきれいだけど血管が「けいれん」して狭くなる冠れん縮性狭心症が従来認められていた2種類でした。(図-1)これらはいずれもニトログリセリンが有効なことから、これまでニトロがきかない胸痛は狭心症ではないと考えられ、心臓神経症とか肋間神経痛と診断されることもありました。
ところが第3の狭心症としてニトロがききにくい微小血管狭心症の存在が知られています。
冠動脈造影で見える冠動脈は本幹が3mm程度ですが、それよりももっと細い100μm以下(図2)の心臓の筋肉の中を走る血管に痙攣が起こるものです。症状が強いにもかかわらず、なかなか診断がつかず病院を転々とする方もあります。
微小血管狭心症の症状
- 胸部圧迫感 2. 針でさすような痛み 3. 息が詰まるような痛み 4.締め付けられるような痛み
女性ホルモン(エストロゲン)の関係
女性ホルモンは、45歳~55歳の閉経前後に急激に減少する、いわゆる更年期と呼ばれる時期であり、この更年期に微小血管狭心症は起こりやすいと言われています。閉経前の女性には、男性によくみられる狭心症がほとんど起こらないのは、エストロゲンの血管を拡張させる働きのためです。
診断
1)症状:胸の圧迫、動悸、息切れ、呼吸困難、肩こり
2)検査:心電図,心エコー、冠状動脈CT
3)心臓カテーテル検査(精密な診断を要する場合)
治療
《血管拡張薬》
血管拡張薬のなかのカルシウム拮抗薬が有効な場合が多いです。へルベッサーやワソランという薬を使用します。また、ニトログリセリンが有効な場合はこれも併用します。
《漢方薬》
半夏厚朴湯、当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸
《生活習慣》
禁煙、運動、食事(大豆製品、野菜、全粒植物性食品の摂取)入浴で身体を温める
【参考資料】
・天野惠子 微少血管狭心症の特徴と診断のポイント 新薬と臨牀,65巻,8号42-53頁
・循環器領域における性差医療に関するガイドライン,Circ J 74; Suppl. 11, 1085-1160, 2010